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街道松 東海道五十三次道中記 街道松
(42) 桑名宿   桑名の石取り祭りは 鉦や太鼓でゴンチキチン    街道地図
木曽・長良・揖斐の三大河川が集合する桑名宿は物資流通の中継点として、また伊勢神宮への参詣客などでも賑わった
宿場であった。江戸時代に2度の大火に見舞われる悲劇の宿場。近いところでは昭和34年
(1959)の伊勢湾台風で
壊滅的な打撃を受けてしまうが、それでも歴史的遺産が多く残されており江戸時代を十分感じることが出来る。

 平成18年4月19日
伊勢大橋からテクテクと揖斐川の堤を歩いてくると六華苑の看板と長屋門が見える。江戸時代の遺構ではないが見てみることに。

六華苑洋館蛤御膳苑内に入り最初に目にするのが「六華苑洋館」(左)。大正2年(1913)完成という、まさに大正ロマンの建物。
国の名勝に指定された庭園も見所。

今回は冒頭から名物の話を。 宮宿で名物ひつまぶしを食べ損なってしまったので桑名ではぜひ 「蛤」 をと六華苑併設レストランで奮発したのが「蛤御膳」(右)。蛤の酒蒸しが旨かった。


住吉神社山口誓子句碑六華苑の斜め先の揖斐川堤防上に「住吉神社」(左)がある。神社前の住吉浦は江戸時代には全国から多数の廻船業者が集まり大変な賑わいだった。今は大規模な治水工事が行われ当時の様子は全く見られない。  

境内に「山口誓子の句碑」(右)が。
   水神に 守られ冬も 大河なり   誓子
     その通りだけど、なんだか平凡だなー。

住吉神社を出て橋を渡り最初の交差点を左に曲がるといよいよ本陣・脇本陣などが並んでいた昔の宿場街。今は料亭や民家が並ぶ静かな町並みに変わっている。

歌行灯句碑桑名宿大塚本陣跡町並みを中程まで歩くと料亭 船津屋の塀の中に建てられていたのは「歌行灯句碑」(左)。
    かわをそに 火をぬすまれて あけやすき   万
と刻まれているそうだがほとんど読めない。久保田万太郎が泉鏡花の歌行灯の舞台である船津屋で詠んだ句。 

その船津屋はもともとは「大塚本陣」(右)であったが明治に入り宿駅制度が無くなると料理旅館となり、現在は高級料亭。その先が脇本陣駿河屋跡で今は料理旅館 山月。


七里のわたし碑桑名七里の渡し跡本陣・脇本陣前の道を進むと突き当たりに「七里のわたし碑」(左)が建てられている。目の前は高い塀になっているが右へ曲がったすぐ先の左側は「桑名七里の渡し跡」(右)。 

この渡しは東海道宿駅制度が出来る前の室町時代から栄えていた。 ここには伊勢神宮一の鳥居が建てられており伊勢神宮の玄関口でもあることからお伊勢参りの旅人でも大変な賑わいを見せた宿場であった。
  

蟠龍櫓(ばんりゅうやぐら)舟会所跡と問屋場跡説明碑渡し跡の先にある建物は「蟠龍櫓(ばんりゅうやぐら)(左)。正式名称は水門統合管理所。蟠龍櫓のあった場所に建てるので外観を極力復元した建物にしたとのこと。嬉しいね。ちなみに蟠龍とは龍が天に昇る前のうずくまった状態。

蟠龍櫓前の公園で一休みしたあと街道に戻りちょっと歩くと「舟会所跡問屋場跡」(右)を説明するプレートが石柱の上に乗っている。舟会所とは今でいうJRの緑の窓口みたいな存在で、ここで乗船の申し込みを行い料金を支払って渡し舟に乗り込んだのだった。


 通り井跡の説明プレートを読んだ後ちょっと寄り道を、と向かった場所が次の交差点を左に曲がり多門橋・舟入橋を渡った先の公園。

本多(平八郎)忠勝像桑名城址碑見付宿の大日堂で松の木に登り武田軍の物見をしていた若武者 「本多(平八郎)忠勝」(左) がここにいた。桑名藩10万石の大名に出世していたのだ。

忠勝像の前が居城 桑名城があった場所。現在は九華公園となっており一角に「桑名城址碑」(右)が建てられている。資料によると桑名城の天守閣は四重六層という勇壮なものであったそうだが残念ながら元禄14年(1701)の大火で焼失。 再建されることはなかった。


街道に戻り次を目指すのだが桑名宿の東海道はベージュのカラー舗装となっているのでこの上を歩けば道に迷うことはない。街道歩きにとっては大変ありがたい仕組み。親切この上なし。

春日神社の青銅鳥居しるべ石山口誓子句碑街道に戻って数分 勢州桑名に過ぎたるものは、銅の鳥居に二朱女郎 と歌われた春日神社の「青銅鳥居」(左)、その横に立つ石塔は「しるべ石」(左)。「たずぬるかた」「おしゆるかた」と刻まれたこの石は行方不明者を捜す伝言板。

春日神社にも有りました「山口誓子句碑」(右)が。
    山車統べて(だしすべて) 鎧皇后 立ち給う   誓子
山車に立つ神巧皇后を詠まれたのだそうだが、誓子さん ちょっと皮肉ってますな。


桑名の日本橋石取り祭りの山車春日神社の斜め前に「歴史を語る公園」という面白い公園があった。「日本橋」(左)を出発して富士山を眺め、桑名宿を見て、三条大橋までわずか2分で歩けるというタイムスリップでもしたような公園だ。

公園の終わりから右に曲がり数分歩くと山口誓子が一句残した「石取り祭りの山車」(右)が展示されている石取会館がある。 桑名の石取り祭りは 鉦や太鼓でゴンチキチン なんだか京都の祇園祭りみたいだな。いやいや向こうはコンチキチン、桑名はゴンチキチン。


指差し道標指差し道標京町見附跡説明板石取会館先の交差点を真っ直ぐ行かず左へ曲がると 行き先を指差している道標があった。この先の商店街の中にも新しい「指差し道標」(左)がありました。 

旧東海道は交差点の先で左へ曲がるのだが真っ直ぐのすぐ先に設置されているのは「京町見附跡」(右)の説明プレート。 街道に戻ると商店街の中の道が旧東海道。


商店街の先でカラー舗装は終わってしまうが、この先の旧東海道も曲がり角には必ず石柱の道標で案内されるので迷うことが無い。商店街を抜け、吉津屋見付跡から枡形道を通って鍛冶町常夜灯跡、万古焼き創始者「沼波弄山」の墓がある高徳寺などを見ながら日新小学校前交差点を右に入って行くと、道は急に旧道らしく変化。
 コメント:鍛冶町常夜灯跡説明プレートは撤去されている。

古い道標梵鐘店本多忠勝が作らせたという 鋳物工場跡の前を通ってしばらく歩くと十字路の向こうにかなり「古い道標」(左)が立っており 「左東海道  右西京」と刻まれている。鉄骨で補強されているが、これからも長く残ってほしい。 

少し歩くと店先に梵鐘が二つ置かれた「梵鐘店」(右)があった。鐘楼に下がっているからこその梵鐘、道端に無造作に置かれた梵鐘はなんとも様にならない。 こんな重い物を盗む人はいないんだろうな。


馬つなぎ金具のある民家立場跡国道1号を越えてすぐの場所に「馬つなぎ金具のある民家」(左)があった。いつ頃まで馬をつないでいたのだろうか。何の変哲もない丸い金具なのでガイドマップが無ければ見落として通り過ぎ。

古民家の数分先の丁字路右側は「立場跡」(右)。 資料によると「立場とは人足の休憩場所、さらには茶店などもあったので一般旅人の休憩場所でもあった」とある。先ほどの 馬つなぎ金具などはまさに立場を象徴する遺構だろう。  


立場跡の丁字路を左に曲がると、どこまでも真っ直ぐな道が続き20分ほど歩く。

伊勢神宮常夜灯と里程標町屋川と文学の関連説明板行き着いたところが員弁川、その手前に立っているのは「伊勢神宮常夜灯と里程標」(左)。この常夜灯は文政元年(1818)に建てられたというから190年近く前のもの。まだまだ長生きしてくれよ。

員弁川(町屋川)は渡しではなく橋が架けられていたが今は橋が無いので少し下流の町屋橋を渡ることに。橋を渡ると「文学の中の町屋川と橋」(左)と題された説明パネルが設置されており江戸期の作品が紹介されている。


山口誓子句碑縄生(なお)一里塚跡碑町屋川を渡り50mほど戻って旧東海道の町並みを歩くとタバコ店の前にまたまた有りました。「山口誓子句碑」(左)が。
   露けさよ 祷りの指を 唇に触れ  誓子   
桑名宿では (ここは朝日町だが) 山口誓子によく出会いますネー。 

誓子句碑の少し先、民家前に江戸から97番目の「縄生(なお)一里塚跡碑」(右)がポツンと立っている。なんだかションボリしているみたいな石碑だ。


 ここから平成18年4月20日
一里塚跡碑から4〜5分歩くと近鉄・伊勢朝日駅の前に出るが、手前の広場と踏切を渡った先の2カ所に朝日町の史跡案内板があるので参考になる。また踏切を渡った先には
旧東海道と刻まれた石柱、さらには樹齢300年の榎の説明碑なども。

小向(おぶけ)神社石柱橘守部誕生地碑踏切を渡って10分ほど歩くと交差点右側に「小向(おぶけ)神社石柱」(左)が立っているが、ここを右に曲がると10分ほどで小向神社。 毎年8月に行われる たいまつ祭りは見応えがあるそうだ。 

交差点を右ではなく左に曲がった先は朝日町資料館。 資料館前の十字路を右に曲がると国学者「橘守部誕生地碑」(右)が駐車場の一角に立っており刻まれている文字は佐々木信綱の くちせぬ名を 國つ学の 道の上に・・・・


浄泉坊多賀大社常夜灯街道に戻り数分歩くと右奥に見える寺院が「浄泉坊」(左)。
街道沿いに寺院が多いが浄泉坊だけはちょっと格が違う。 東海道を往来する大名はこの寺院だけは駕籠から降り頭を下げて通らなければならなかった。何故ならこの寺院には故有って三ツ葉葵の使用が許されていたのだ。徳川のご威光は凄い。 

田んぼの遙か彼方に見えるのは「多賀大社常夜灯」(右)。高台にあるせいかすっくと立った姿がなんとも頼もしい。
 


この先は伊勢湾岸道の下を通り、朝明川を越えると朝日町から四日市市に入る。目指すは43番目の宿場四日市宿。

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